味な話の素  No.238 2023年04月号 (9176-9235) Since 2003/04/29
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お報せ:電子版「人間理解のグループ・ダイナミックス」(Kindle版)を出しました。  
父の日記 [60] 2023/04/30 Sun 9235 
 
父は1975年6月1日の日記に、母と中国から引き揚げてきたときのことを書いている。
 「昭和21年2月18日の朝、私たちは佐世保港の針尾崎に上陸して、海兵団の兵営の後に三日二晩いた。そして21日に▢▢(母の名前)の実家にたどり着いた。千足駅に義母の〇〇さんが迎えにおいでになった。▢▢の実家へ行く途中で岳父の◇◇氏に会った。その時の◇◇氏の喜んでいた顔を思い出す」。
 わたしの両親も大陸からの「引き揚げ者」である。わたしの世代は戦争を知らないが、両親を通して戦争とつながっている。また、母の兄は南方に出征して帰ってこなかったから、写真で顔を見るだけだった。わたしにとって血のつながったおじさんが戦死しているのである。そして、戦争を実体験した人たちが少なくなっていく。あの敗戦から今年は78年目になるから、記憶が残る年を考えると、全員が80歳を超えているのである。
 そして、この瞬間にも戦争で命を失っている人たちがいる。
祖父からの手紙(10) [59] 2023/04/30 Sun 9234 4月16日 [45] の続き
 
祖父は手紙の中で孫に語りける。
 「家康の家庭訓に、『不自由を常と思えば不平なし、心に望み起こらば困窮したる時を思い起こすべし』という一節があります。今の世の中では不自由を常と思って不平なしでいては進歩はありませんから、努力してその不自由をのぞくことでしょう。ただ努力せずに不自由だ不自由だと不平ばかりならべていては何にもなりますまい」。
 おじいちゃんは「家康の言」を使いながら、「努力せずに不自由だ不自由だと不平ばかりならべていては何にもなりますまい」と言って、「そういうふうに解釈すべきでしょうね」と語りかけている。小学生のわたしはこれをどう受け止めただろうか。
20歳の誕生日 [58] 2023/04/29 Sat 9233 
 本日、「味な話の素」が20歳を迎えました。わたしがホームページを開設したのは2003年4月10日です。そして月末の29日、本コラムのスタートとなりました。第1回目は「行動変容のために」として、行動を変えることの必要性と可能性を訴えました。その日は「沈黙のコミュニケーション」「発達段階と子どもの数」を加えて三本立てにしています。
 それからは、あれやこれやと続けていくのですが、あるときから、文字数を720にこだわり続けました。とにかく、最後の「。」を720字目にするのです。その結果、改行なしで突っ走ったため、「改行」のお勧めをいただく事態となりました。それも講演の会場で直にお聞きしたものですから、心を入れ替えて改行を入れることにしたのです。人間の記憶は不思議なもので、その会場が熊本県の宿泊施設テルサだったことが蘇ります。
 おかげさまで、「9,233回」にもなりました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
世論調査 [57] 2023/04/29 Sat 9232 
 マスコミの世論調査は何かと話題になる。とくに内閣や政党支持率はかなり頻繁に行われる。そして、複数のメディアの結果が目に見えて異なっていると、それも話題になる。これは質問項目が違っており、多くが電話によるもので、記事に現れないが、質問者の設問に対する「説明や前置き」などが影響を与える可能性もある。さらに、「声のトーン」や「性別」が関係しているかもしれない。それに回答率もそれほど高くはない。
 わたしは回答を断った人たちの年齢やその理由に興味がある。選挙の投票率は年代別の統計があるが、世代によってアンケートに応諾する割合が異なれば、それがデータに影響を与える。
再審考 [56] 2023/04/28 Fri 9231 
 強盗殺人事件で無期懲役が確定し、服役中に病死した受刑者の再審が認められた。本人が亡くなった後に再審が行われるのは初めてのことである。また、静岡県で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌氏の再審も決まった。前者では証拠写真のネガに裁判で提出されていなかったものが含まれているとして、捜査書類の信用性に疑問を呈した。後者では、事件の1年後に出てきた証拠品について、裁判所は捜査機関による捏造の可能性にまで言及した。
 そもそも検察には証拠の提出に決定権があり、手持ちのすべてを提示する義務はないらしい。そうなると、自分たちの論理に合わないものは出したくなくなる。
遠くの人たち [55] 2023/04/28 Fri 9230 昨日 [53] の続き
 ここで話が飛ぶが、この数年は半導体不足で、あのトヨタですら工場を止める事態が発生した。この間は[ジャストインタイム]が機能していなかったことになる。それには世界規模で発生した様々な要因が関わっており、[ジャストインタイム]を超える問題であるかもしれない。しかし、一時的にしても、そうしたことは起こるのである。
 ともあれ、あることが順調にいくためには、それを支える組織と人がいる。その距離が遠くなればなるほど、上位にいる者には、そうした人々が見えにくくなることを肝に銘じておきたい。
クラウドのセキュリティ [54] 2023/04/27 Thu 9229 
 クラウドを使いはじめてからかなりの時間になる。世界中のどこにいても、ネットさえつながれば、いつでも自分のファイルにアクセスできる。USBなどの記憶媒体を持ち歩くこともないから安全性も高い。自分が使っているコンピュータが壊れてもデータに関してはまったく影響がない。わたしは1970年代からコンピュータなるものに接し始めたが、その当時は、インターネットやクラウドコンピューティングなど夢にも出てこなかった。
 まことにけっこうなことだが、クラウドそのものが破壊されたらどうなるのだろう。素人が想像できないセキュリティを確保しているに違いないが、この世に[絶対]は「絶対にない」のである。そうなると、それなりの対策を取らなければならなくなる。そんなことで、わたしはクラウドのファイルを、コンピュータに繋いでいないハードディスクに落とすことにしている。これは数ヶ月ごとだが、この作業をはじめると2日から3日間かかる。
どこかで終わる [53] 2023/04/27 Thu 9228 昨日 [51] の続き
 製造に関わるすべての組織で在庫なしが実現されれるとすれば、それは驚異のシステムである。しかし、[ジャストインタイム]がすべての段階で実現されるとは考えられない。そうなるとまるでネズミ講もどきだが、これが早い段階で行き詰まるのは実証済みである。前世紀のある日、中部地区で活動していた経営者にこの点について聴くと「そうなんですよ」という答えが返ってきた。世界は部分最適化はできても、総体最適化は容易ではない。
「初心」と「小心」 [52] 2023/04/26 Wed 9227 
 「初心に返れ」「初心、忘るべからず」とは、われわれが「初心に返れない」「初心を忘れる」現実を伝えている。毎朝、前夜に「あの世に逝った」にもかかわらず今日も「蘇った」事実を噛みしめて、「今日もしっかり生きましょう」と自分に声をかける。まあ、「一日一初心」というであれば、おそらくは忘れにくい。ところで「しょしん」に「う」を入れた「しょうしん:小心」もなかなかいいい言葉だ。これを「気が小さいこと」として否定的に捉えるのはいかがなものか。それは「小さなことに気づく心」であり、「力」だと強調したい。かくして「小心」はリーダーシップの発揮に欠かせない要件なのである。
どこまで続く? [51] 2023/04/26 Wed 9226 昨日 [49] の続き
 ここで[ジャストイン]に戻ると、在庫が多いとそれを保管するコストがかかるから、それはできるだけない方がいい。トヨタの[ジャストインシステム]はこれを徹底して追求するのだろう。ただし、必要なモノは[ジャストイン]で調達できなければならない。このシステムがスムーズに動くには[ジャストイン]を保証する供給者が欠かせない。彼らは要求があれば直ちに対応する。そのためには[一定の在庫]が必要になる。そこもまた[ジャストイン]であるのかどうか。このシステムについて初めて聴いたとき、わたしはその点に興味がわいた。そうだとすれば。その流れはどの段階までできているのだろう。
現場の声(11) [50] 2023/04/25 Tue 9225 4月21日 [41] の続き
 「007.監督者に落ち着きがない」
 きわめて抽象的な表現である。しかし、これは[監督者のリーダーシップ]に問題があることを示唆している。上司に落ち着きがなければ、部下が不安になるのは自然である。何かが起きてから、「監督者が落ち着いて指示をしていなかった」ことがわかっても後の祭りになる。

 こんな調子で[現場の声]をボチボチ取りあげているが、お読みいただく際は、「自分の職場ではどうなんだろう」と頭の中で1回だけでも問いかけていただきたい。一般的には、「そうした声」に的確な対応をすることが期待される。しかし、組織の不正や不祥事などが明らかになった後で行われるトップの会見や調査報告書を見ると、それがうまくいっていなかったことを実証している。
「安かろう悪かろう」からの脱皮 [49] 2023/04/25 Tue 9224 昨日 [47] の続き
 
中国は海外から押し寄せる企業に対して、ノウハウを提供することを開放の条件にした。この政策のもとで、先進の技術をドンドン身につけていった。そして気づいてみれば、高価格帯ではないものの、ドイツが誇るブラウンのシェーバーまでが[メイドインチャイナ]になっていた。これに驚いたわたしは、その[発見]を本コラムに書いたことがある。そして、徐々に「安かろう悪かろう」から脱皮していくのである。
 わが国には、まだ中国製品の品質は今ひとつと考えている人たちがいるかもしれない。もちろん、すべてが同じスピードで進化するはずはない。しかし、たとえば、ある分野のドローンに関しては、「品質・価格ともに中国製が最高最良だ」と評価をする人と会ったことがある。このごろ開催された上海の自動車ショーでは、中国製のEVに人だかりができたという。こうした状況は、あの敗戦から1980年代ころまでに、日本の製造業が辿った道と重なるのである。
みんな同じ? [48] 2023/04/24 Mon 9223 
 
「男女一緒の徒競走 『共同参画』…模索する学校」(熊本日日新聞:2003/9/29)。手元にあるスクラップである。記事は「運動会の徒競走で、男女を一緒に走らせる小学校が目立ってきた」から始まる。そして、そして、初めて六年生まで全学年の児童が男女混合で走ることにした小学校を紹介している。また、男女混合で走るグループをくじ引きや速力順で決める小学校の教頭の言も伝えている。いまから20年前のことである。これを見て、いつのころか徒競走そのものを止めた学校もあったことを思い出した。
 「みんなが同じ」ではなく、「みんなが違う」ことを最大限に尊重する。そして、それが現実の態度や行動として実践できることを大事にする。そんな大人になる教育であってほしい。日頃の学習や活動ではパットしないが、年に一度の徒競走のときだけヒーローやヒロインになれる。そんな子どももいたのである。記事は「模索中の段階のようだ」で締められている。
[ジャストインタイム]と[コスト] [47] 2023/04/24 Mon 9222 4月22日 [44] の続き
 
在庫を充実させれば、それだけコストがかかる。だから、これは最小限にしたい。その究極が[ジャストインタイム]だろう。その一方で、供給が止まると深刻な影響を受ける。それが[リスク]であり、そもそも[リスクマネジメント]はコストがかかるのである。そして、組織も個人も短期ではなく長い目で[コスト]を考えることが必要になる。こうした視点から歴史を見ると、中国が頭に浮かぶ。いまから半世紀ほど前、中国は開放政策を採用して海外から資本を導入しはじめた。とにかく低コストでものがつくれるというので、先進国が競って投資したため、ある時期から[世界の工場]と呼ばれるようになった。
忘却を思い出す [46] 2023/04/23 Sun 9221 昨日 [45] の続き
 
講演や研修で聴いた内容の忘却対策についての質問に対する回答はおしまいを迎える。
 また、わたしは、人間には「忘れる力」が必須なものとして与えられていると確信しています。肉親や友人を失うといった厳しい体験ですら、その哀しさの程度は時間とともに軽減していきます。そうでなければ、心身は疲れるばかりで、日常の生活まで支障を来すことになるでしょう。
 ご体験いいただいたトレーニングについても、「何か忘れたなあ」と「思い出される」ことがあれば、また同じような研修の機会をお探しいただいて、参加されることをお勧めします。そのことが「リハーサル効果」になりますし、わたしも仕事になって(?)、めでたし、めでたしでございます。最後は冗談めいてしまいましたが、トレーニングの中の一つでも、たとえば「部下の見方も大事にしたいなあ」とか、「リーダーシップは鍛えることができるんだなあ」といったことを思い出していただければ幸いです。
祖父からの手紙(9) [45] 2023/04/16 Sun 9220 4月9日 [17] の続き
 
祖父は、いまや懐かしいインク壜を使った付けペンで書き続けていく。わたしの製作による新聞[伊万里ニュース]の末尾には「家族がほしいもの」の特集(?)が掲載されていたようだ。
 「私のほしいものはお母さんと▢▢(妹の名前)のはごもっともだと思うけれど、お父さんと道雄さんのには無理はないけれども少し辛抱しなさいと申し上げねばならぬようなのがあるようですね」。
 わたしは小学生だから良いとして、わが父は、義理の父親から「少し辛抱しなさい」と言われるとは、一体全体どんなものを挙げていたのだろう。おそらく大風呂敷を広げたのだと思うが、ともあれ、この一文を読んだだけで笑ってしまう。
ジャストインタイム [44] 2023/04/22 Sat 9219 
 
トヨタの[ジャストインタイム]システムは世界でも知られた効率化のモデルである。それは無駄な在庫を持たず、必要なときにジャストインタイムでゲットするということである。本コラムですでに触れたことがあるが、これは本体のトヨタには究極のシステムであることは疑いないが、製品の納品を要求される方にとってはその在庫がなければアウトになる。本体側の気持ちは措くとして、供給側の在庫を前提にしてジャストインタイムが成立しているのである。
 世の中は何が起きるか予測することはむずかしいもので、このシステムも外的環境に影響を受けやすい。それは[ジャストインタイム]と[リスクマネージメント]の兼ね合いである。かつては地震の被災や工場火災、そして世界的な半導体不足、さらにはロシアとウクライナの戦闘で、半導体の供給が[ジャストインタイム]でなくなってしまった。こうした事態を想定しておくべきか、やむを得ないと受け止めるのか。
スッキリ割り切り [43] 2023/04/22 Sat 9218 昨日 [42] の続き
 
刹那的記憶=忘却に関わる話は続いていく。
 わたしたちは、「短期記憶」の内容をリハーサル(頭の中で繰り返すこと)によって「長期記憶」という倉庫に移動することができるとされています。こうしたことから、忘れないためには「何度も記憶したい内容を振り返る」ことが不可欠になります。そのとき、「記憶しておきたい」という気持ちが大きな役割を果たします。また、「記憶しなければならない」という事情があれば、いやでも頭に残るでしょう。そんなわけで、「間違いなく忘れること」であれば、それはご自身にとって重要度が低いのだと割り切られた方がスッキリされるでしょう。どうしても憶えておきたいことや気になることは、いつも頭の中に浮かぶものだと思います。
 こんな調子で、「忘れるものは、どうせ大したものじゃない」などと言い切ってしまえばそれでおしまい。これでは質問に対する答えにもアドバイスにもなっていないと呆れられるかもしれない。
刹那的記憶 [42] 2023/04/21 Fri 9217 昨日 [40] の続き
 
講演や研修で学んで意欲が高まっても、やがては「間違いなく」忘れてしまう。これにどう対処するかというご質問に、わたしは次のようにお答えした。
 人の記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があるとされています。もちろん、これは記憶という現象を説明するための仮説的な概念です。したがって、大脳を開けて「ほら、ここに学んだことが蓄積されているでしょ」と言って見せられるものではありません。さて、「短期記憶」はメモなしで番号を聴いてすぐに電話をかけるときなどに役立ちますが、あっという間に頭の中から消失します。用が済めばお払い箱というわけで、何とも「刹那的」で「切ない」のです。
現場の声(10) [41] 2023/04/21 Fri 9216 3月25日 [50] の続き
 「006.□□を計画以外の間合いでも使用している」
 □□には業種がわかる具体的なモノが記されているので伏せ字にした。ある物品を使用する際に規定されている条件以外でも使うと云うことである。たとえば、公用車を自分の別荘への往復に使って問題になった地方自治体の長がいた。これを公私混同ではないかと問われて、「公用車は動く執務室」などと答えていたが、「いま五つ」くらいは説得力に欠けていた。これは組織のトップのケースだが、どんな立場でも「目的外使用」の可能性はいくらでもある。最初は緊急対応でやむを得ずといった理由があっても、それがすぐに「日常化」するから危ういのである。
忘却対策 [40] 2023/04/20 Thu 9215 
 
わたしの話を聴いていただいた方からのご質問、
 「情報提供いただいた内容については、それぞれなるほどなと思うことばかりの内容で、今後もこの内容を忘れることなく永く意識にとどめておくことができればよいと思います。が、しばらくすると間違いなく忘れてしまいます。忘れない、または思い出す何かよい方法をご教示願います」。
 いやあ、わたしが提供した情報をしっかり記憶に置くだけでなく意識して活用されるということで、これ以上にありがたいことはない。その一方で、「間違いなく忘れてしまう」と確信されているのは、誰もが理解できる。さて、人間の特性を突いたご質問にどうお答えしようか。
大いなる悩み [39] 2023/04/20 Thu 9214 昨日 [37] の続き
 
未使用のアメニティを次の宿泊客に回すのであれば一件落着です。この情報で勝手に「気が楽になった」のでした。ところが、コロナが少しおとなしくなって、久しぶりにホテルに泊まって、「悪魔のささやき」に「魔が差して」「Yes man」としてアメニティの剃刀に手を出してしまいました。
 いまや、剃刀は鉄製の「出血必殺仕様」から「サラリ3枚あるいは4枚刃仕様」に大進化を遂げていたのです。これには参ってしまいました。それを自分の頬の上を滑らせながら、「これで十分にいけるじゃないか」と心の中で絶叫し続けていました。同時に、頭と心の中で悩ましい問題が湧き起こったのです。じつは、ほんの少し前、久しぶりに「Schick 極」と銘打った新品を購入したばかりだったのです。それも店頭に並ぶジレット製などと比較しながら選んだのです。本格派の方が重厚さはありますが、携行する際は重くなります。いま、これがわたしを大いに悩ませているのです。
「明暗」or「暗々」? [38] 2023/04/19 Wed 9213 昨日 [36] の続き
 
漱石が書いたものを読んだのは中学から高校の時代で、大学に入ってからは記憶がはっきりしない。熊本に来てから「草枕」を再読したような気もするが、この地に住んで40年を超えるから、なんとも曖昧である。
 そんなわたしが先月「明暗」を読んだ。漱石の未完の連載で188回で終わったものである。漱石は文豪の名をほしいままにしているが、大正の人々には毎日の新聞連載が待ち遠しかったのだろう。それはそれで大いにけっこうなことだが、わたしには「明暗」ではなく、タイトルを「暗々」に替えた方が良いのではないかと思えた。どこにも「明」の空気など漂っていないのである。それに、登場人物たちが、無頼漢風の一人を除いて、けっこう裕福で、明日のお米の心配などしなくてすむ人たちにあふれる物語である。それを当時の人々はこぞって高い評価をしていたのだろうか。
「もったいない虫」まで出てきて… [37] 2023/04/19 Wed 9212 昨日 [33] の続き
 
鉄がプラスティックに進化して、「流血」を伴わなくなってから、わたしの心は「悪魔の僕」となりました。それは「1回だけ使ってポイ捨ては犯罪同然だぞ」というわたし自身の心の声(?)と容易に共鳴したのです。それだけではありません。連泊すれば、翌日には新しい「出血回避可」の新品が置かれています。これを発見して、「放っておいたら処分されるのではないか」と思うのです。すると今度は「もったいない虫」が黙っていないのです。もっとも、未使用のものの対処法を関係者に聴いたことはありません。つい最近ですが、これについてネットで探すと、「そのまま次に回す」という記事もありました。
誰も言ってない? [36] 2023/04/18 Tue 9211 昨日 [33] の続き
 
漱石の大脳は東大医学部に保存されているが、「いま死ぬと困る」と発した漱石の真意はわからない。ただ、門下生が「先生がそんなことを言うはずがない」と、そう記した主治医を「捏造だ」と批判したのは冷静さに欠けている。そう思いたくないという気持ちが「捏造」という言葉まで引き出したとすれば、言葉のプロにあふれていた門人たちにしては、言葉の選択を誤った感がある。
 それに、その心情が全員一致だったのかどうかわからない。「先生は連載している『明暗』の区切りがつかないうちに死んでは困ると思ったのではないか」と言った門人が一人くらいいてもよさそうではないか。事実、漱石の「机上の原稿用紙には、『189』という回数が記されていたが、本文は何も書かれていなかった」という(山﨑著)。そんな状況で「いま死ぬと困る」と言わない方が無責任ではないか。世の中の「全員一致」はけっこう危うい。わたしはこれを「集団止考」と呼んでいる。
悪魔にも「Yes man」 [35] 2023/04/18 Tue 9210 昨日 [34] の続き
 
さて、いつのころか「血だらけ剃刀」は「プラスティック製」に取って代わられました。今から考えると、白いゴツゴツの本体に一枚の刃がはめ込まれていただけのものですが、とにかく「出血」が引き起こされる程度は飛躍的に減少したのです。そうなると、それほど強靱でない私の髭を一回剃っただけではアウトにならないわけです。そこで体内に養っている「もったいない虫」が活動しはじめます。「これって、もう棄てるんかい?まだ使えるじゃないか…」というわわけです。わたしが生まれて以来ずっと保持し続けてきた「Yes man スピリット」は、わが「心」のなかに潜む悪魔にまで適用されるのでした。
アメニティとの距離感 [34] 2023/04/17 Mon 9209 昨日 [32] の続き
 
薄い鉄製の剃刀は、血だらけになる問題が発生する前にヒリヒリしてくるのでした。だから、わたしもこれは忌避して自前の安全剃刀を持参していたのです。こちらは適当に重みのある鉄製でしたが、ネジを使って薄い歯を交換していくものでした。すでに絶滅「器具」ですから、それを文章で表現することは不可能に近いと困ってしまいます。まあ、同世代の方にはおわかりいただけるでしょう。
 ともあれ、ブリキのような剃刀は持ち帰る気になりませんでした。その当時は「アメニティグッズ」なる言葉はありませんでしたが、「血を見る道具」は、どう考えても[amenity:心地よさ、快適さ]とは対極にありました。
漱石の一言 [33] 2023/04/17 Mon 9208 
 
山﨑光夫「胃弱・癇癪・夏目漱石」(講談社)を読んだ。主治医の真鍋嘉一郎医師が「平常『去私則天』といふことを云ってゐるが、死ぬ時に先生が『死ぬと困る』といった」と回想記に書いた。山﨑は「これには漱石の門人たちから、先生がそんなことを言うはずがない、捏造して先生を汚すと糾弾されている」と記し、「だが、漱石の『死ぬと困る』は看護婦もきいているからまちがいはない」と結論づけている。
 ここで門人たちの反応が面白い。歴史に残る大文豪、人生を悟りきった偉大なる漱石大先生が、そんな弱音を吐くことなどあり得ないという心情だろう。ものごとの見え方は、個々人が、あるいは集団が置かれた状況によって違ってくる。漱石は1916年5月から朝日新聞に小説「明暗」を連載中で、12月9日に亡くなったとき188回分まで書いていた。こうした状況で「(いま)死ぬと困る」との発言は、自分の仕事に責任を感じる人間であれば当然のことである。
前世紀の思い出 [32] 2023/04/16 Sun 9207 昨日 [30] の続き
 
「ややっ!切れ味抜群じゃないか!」。悪魔のささやきに誘惑されて、おそらく10年ぶり近くでホテルの剃刀を頬の上に滑らせたとき、わたしは思わず叫んでいたのでした。
 それは前世紀のことで、わたしがまだ20代のころだったでしょう。その当時は旅館が主流でしたが、洗面台にはおそらく鉄でできた取っ手のついた剃刀が置いてありました。顔に石けんを塗ってこれを動かすと、その瞬間に頬のあちこちがヒリヒリして傷がついて、血がにじみ出てくるのです。このままだと顔面が血だらけになってしまいます。そんな代物でしたから、これを持って帰るなどとは、頭の片隅にも浮かぶことはありませんでした。
祖父からの手紙(8) [31] 2023/04/16 Sun 9206 4月9日 [17] の続き
 
祖父の[伊万里ニュース]への手紙は続く。
 「次にニュースに関して、1.私は誰でしょう。知りません」。[ニュース]にはクイズも含まれていたようだ。「2.お母さんへ▢▢のみならず、おじいちゃんのもみんな焼きすててください。殊におじいちゃんの下手糞な手紙が一枚でも残っていると恥になりますから」。▢▢にはおばさんの名前が記されている。わたしの母、祖父からいえば娘に対して、手紙類は焼き捨てるよう依頼している。祖父がこうしたことを書きたくなる内容が[ニュース]の中に書かれたいたのだろう。
 「3.頭のテストはエッフェルとファーブルだけ知っていました。あとに回答がついているのは助かりますね」。これまた、[頭のテスト]と名付けたクイズを出していたと思われる。正解もあって、親切な(?)対応をしている。「4.記者だより 〇〇ちゃんも大変ですね。その外面白く読みました」。ここで、「〇〇」は私の妹の名前が書かれている。
悪魔の操作[30] 2023/04/15 Sat 9205 昨日 [27] の続き
 剃刀や歯ブラシの「溜め込み癖」を完璧に克服して10年が過ぎました。剃刀はシックの五枚刃を持参し、ホテルのものは使わない習慣が確固たる常識となったのです。さらに、コロナ禍もあって宿泊することも激減しましたから、いつの間にか「あの癖は遠い昔の思い出」となりました。しかし人間には出来心というものがあるのでしょうか。つい先だって、久しぶりに泊まったホテルでアメニティの剃刀に手が出てしまったのです。それは悪魔の操作だったのかもしれません。いつも持参しているシェービングフォームを顔に乗せて、その剃刀を右目の下から顎に向かって下ろしたのです。そう、いつものようにです。
読書雑記(3) [29] 2023/04/15 Sat 9204 3月17日 [34] の続き
 
漱石の「草枕」を読みはじめた1964年12月8日の日記の一部。「漱石の『草枕』を少し読んだが、たしかに面白い。彼の言うように、この世は俗悪である。しかし俗悪から抜け出すこともできないのであるから、俗の世を過ごすにしても、いかにうまく楽しくやっていくかが本当の問題であって、俗世間から出ようとするのは無理である」。高校1年生の公開を想定していない日記であり、スマートな文章とはとても言えない。ただ、世の中を「俗悪だ」などと上から目線で見下すのもいかがなものかという気持ちが漂っている。人と人との「関わりの世界」でまずは「うまく楽しくやっていく」ことを重視していたようだ。
デジタル・レントゲン[28] 2023/04/14 Fri 9203 
 「レントゲンもデジタルになるんだろうなあ」。わたしがふとそう思ったのは、何回目のドックのときだっただろう。おそらくデジカメなるものの精度がとめどなく上がっているときだから、10年や20年も昔のことである。人間の網膜には120万から150万個の視神経細胞があるらしい。つまりは、100数十万画素といったところである。ただし、外界の光を受ける視細胞そのものは1億もあるというから、こちらを画素と考えると、まだそこまでは到達していないのかもしれない。いずれにしても、富士フイルム製のレントゲンもデジタルで、いわゆるフィルムは使わない。そして、いまやポータブルまで登場している。
断固たる決意[27] 2023/04/14 Fri 9202 昨日 [25] の続き
 わたしは10年ほど前まで、ホテルに泊まると「剃刀」だけは、いやじつは「歯ブラシ」も「もったいない」とばかり持ち帰り溜め込んでいました。これでは確実に進む老化に向けての身辺整理はできません。そこで大いなる行動変革を決意したのです。この問題は「出」だけでなく、「入」も押さえなれば解決しないので、ホテルから「持ち帰らない」ことを徹底したのです。その結果、「在庫」は順調に減少し続け、空間も気持ちもスッキリしたのです。
あと1週間だったのに[26] 2023/04/13 Thu 9201 昨日 [23] の続き
 新聞を情報源にしたと思われるメモには、ごみ箱に吸い殻を入れて小火騒ぎを起こした校長は60歳となっている。そこに「この3月でご定年」とてあり、「このボヤ事件は23日だから、あと1週間」と続いている。
 人間の出来事とはこんなものなのである。ゴール寸前に全国ニュースになる事件の主役になった。これは過失と言うよりはほとんど破廉恥と言える大失態で、何もないではすまなかっただろう。最後の最後に魔が差したのか、それとも今回がはじめてだったのかとの疑問もわく。ともあれ、現実は残酷で、お気の毒だと思いながらも、「あきれはてて、開いた口が塞がらない」ことだけは否定のしようがない。
「さよなら」の儀式[25] 2023/04/13 Thu 9200 昨日 [23] の続き
 わたしは、自分ではそれなりにモノの整理をする方だと思ってきました。
 その昔は、ときおり紙類を中心に燃やしていました。たとえば庭の隅で紙を小さな山にしてマッチで火をつけるのです。するとパッと炎が上がってメラメラと燃えていきます。印刷物だと歪んで灰になりながらも文字が読めたりするんですね。その上に、手紙などにさらりと目を通して炎の中に投げ入れていきます。こころのなかで「さよなら」と声をかけている自分がいます。それで、もう二度と会うことはないと気持ちの整理ができます。
 そんな中で、手から離そうとした瞬間に「ちょっと待てよ、これはいま焼かなくてもいいか」と生き残るものも出てくるわけです。ただし、経験的には、そうして手元に残ったものの大半が、次の整理の際には、「サヨナラ」となる確率が高かったと思います。ともあれ、燃えるモノはそんな空気の中で処分していたものです。いまではそれも昔話になってしまいましたね。
校長の「隠れタバコ」[24] 2023/04/12 Wed 9199 昨日 [22] の続き
 校長の「隠れタバコ」で、ごみ箱から出火した学校は「敷地内では全面禁煙」にしていたという。とにかく言葉を失ってしまう。校長室で吸ったとなれば「隠れタバコ」にすらなっていない。その上、吸い殻をゴミ箱に捨てるのだから、信じがたいことこの上ない。ご本人としては消したつもりだったのだろうが、そもそもゴミ箱なんかに吸い殻を捨てるかいな。世の中には訳の分からないことをする人が老若男女を問わずいる。とは言え、学校の校長先生なのである。最低限の常識というか、分別は持っていただかないと、子どもたちに示しがつかない。それに、タバコを吸ったら臭いが残ることくらい知っておくべきだ。
銃刀法違反?[23] 2023/04/12 Wed 9198 昨日 [21] の続き
わたしが熊本大学を定年で辞める1年ほど前、ロッカーの中に「ホテルの剃刀」の塊が入った複数の紙袋を目にして愕然としました。その瞬間、「このことがバレると、銃刀法違反で逮捕されるのではないか」と身震いしたのです。何でもかんでももったいないと言いながら物を取っておくのは団塊世代の特徴ではなく、わたしの個人的な特性というべきでしょう。世の中には身の回りの物を右から左にポンポンと棄てる知り合いもいますから。
ニュースになる話 [22] 2023/04/11 Tue 9197 
 
わたしが小学生のとき、「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」という話を聴いた。それは担任の先生の話だったような気がするが、はっきりした記憶はない。ともあれ、じつに面白い言い回しながら、真実を突いている。もう10年以上も前に書いた「隠れタバコ」と題したメモがある。冒頭、「最初に『開いた口がふさがらない』と書いてから始めたいお話し」と記し本題に入っている。
 関東地方の小学校でぼやがあった。その原因が校長の「隠れタバコ」だというからたまげてしまう。学校の火災報知器が作動した。調べてみると校長室のゴミ箱から火が出ていたという。教頭らがすぐに消火したが、机の一部が焦げたらしい。子どもたちの避難もなく、けが人も出なかった。まあ、普通なら「めでたし、めでたし」で済むだろうが、出火の原因がまずい、いやまず過ぎる。校長が隠れてタバコを吸ったためだというのだ。
 これは確かにニュースになる。
悩ましい問題 [21] 2023/04/11 Tue 9196 
 
コロナが少しばかりおとなしくなってきました。そうした中で、2019年までの対面方式も戻ってきています。ただ、「コロナ禍」でお付き合いが始まった組織には、当初からリモートが前提のものもあります。また、「基礎研修」と「フォロー研修」をセットにした「リーダーシップ・トレーニング」では、「前者は対面、後者はリモート」にするハイブリッド方式も出てきました。人生の基本を「Yes manに徹する」ことに徹してきたわたしですから、これまた大歓迎であることは言うまでもありません。ところで、対面の復帰に伴って、またぞろ宿泊する機会が増えてきたことから、悩ましい問題に直面することになりました。
電子版「人間理解のグループ・ダイナミックス」 [20] 2023/04/10 Mon 9195 
 
電子書籍「人間理解のグループ・ダイナミックス」を出しました(表紙参照)。そもそもは2001年にナカニシヤ出版から発刊したものですが、こちらは2年ほど前に絶版にしていました。これを電子版にするため、半年ほどかけて徹底的に修正加筆しました。前著になかった「リーダーシップ」も入れました。そんなわけで、書籍版は99,741文字でしたが、電子版は134,850文字と、何と35%ほどの増量となりました。この新版発刊の経緯については、超粘着質のわたしですから、これからゆっくりお話しするつもりでおります。ともあれ、240ページで900円(Amazon)ですから、われながら「お買い得」だと思いますよ!
「My正解」のまとめ[19] 2023/04/10 Mon 9194 昨日 [18] の続き
 「ほめる免許」に言及してから、次のように続けた。
 これも「対人関係のインフラ」と関係しますが、リーダーと部下が互いに不信感に充ち満ちていれば、リーダーが本気のつもりでほめても、「何か裏があるのではないか」と疑われる可能性大です。一方、互いが信頼感にあふれ、リーダーが部下から尊敬され、慕われている場合は、「見え見えの歯の浮くようなお世辞」を言われても、部下は「そんなことありません」などと言いながら、しっかり喜ぶに違いありません。まさに、すべての基礎が「対人関係のインフラ」にあるということです。
 本日のところはお問い合わせに関して一応正解になる可能性のあるものの一つを提示いたしました。ご参考になれば幸いでございます。
 そもそもは「コミュニケーション」に関わる注意点などについての質問だったが、それが「ほめるリーダーシップ」にまで拡がった。これもリーダーに必要なコミュニケーション力と考えたからである。
ほめるライセンス [18] 2023/04/09 Sun 9193 昨日 [16] の続き
 
コミュニケーションの話題で、「人間関係のインフラ」が出来上がっていないと、管理職は、部下たちが「勝手なことを言うに違いない」と心配になる。あるいは、「何でも自由に言いなさい」といっても忖度話だけしか出てこない。それでは意味がないですねという話の続き。
 それは、リーダーが部下を「ほめる、評価する」ことにも適用できます。お互いの関係によってリーダーのほめる行為も意味が違ってきます。わたしは「ほめる免許」のお話しをすることがあります。自分はリーダーとしてほめているけれど、「部下からほめられたことがない」という方には、「ほめる運転は無免許ですよ」と言っています。また、「ちょっとだけはほめられる」方は「C級ライセンス」を、「けっこうほめられるよ」と思われる方には「B級ライセンス」を差し上げています。そして、「いつもほめられている」と言われる場合は、「ご本人の認識が正しければ」の条件付きで「Aライセンス」所得者となります。
祖父からの手紙(8) [17] 2023/04/09 Sun 9192 4月2日 [3] の続き
 
同じ「借間」の先生が、酔って「家に帰って、しょんべんまって、にゅーっぞ」と叫んだのだが、最後の「にゅーっぞ」は「寝るぞーっ」という意味である。ともあれ、わが家族は「借家」でなく「借間」で、しかも同じ1階には教師が住んでいたのである。それが1950年代後半の住宅事情だった。その後、2軒長屋仕様の新築宿舎、いわゆる官舎なるものが建てられ、わが家はめでたくそこに転居した。
 この話、祖父からの手紙とは関係がなくなったようだが、これは、「今度の家は学校からは少し遠くなったそうですが良いところだそうですね。涼しい秋になって行けたら良いがなーと思っています」という祖父からの手紙(3月26日[52])」の続きである。現実に、小学校の校区は変わったが、転校はしなかった。
「マカロニ・ウエスタン」 [16] 2023/04/08 Sat 9191 昨日 [14] の続き
 
さて、「硫黄島二部作」の監督クリント・イーストウッドだが、われわれ世代には俳優として知られている。前世紀の60年代から70年代にかけて、「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれる西部劇が流行った。これはイタリア製で、本国や欧米では[Spaghetti Western]らしいが、映画評論家の淀川長治が「スパゲッティは細いので」といった理由で「マカロニ」にしたという。ともあれ、イタリア製西部劇で颯爽と登場したのがクリント・イーストウッドだった。その中でも、もっとも知られているのが「荒野の用心棒」だろう。その内容が黒澤明監督の「用心棒」の丸写しで、著作権侵害の問題にまで発展することになった。
「忌憚」の空気 [15] 2023/04/08 Sat 9190 昨日 [13] の続き
 
スムーズなコミュニケーションを実現するには、職場のみんなで知恵を出し合うことが大事だと書いた後で、次のように続けた。
 ご自分のコミュニケーション能力にしても、「もっとこういう風に言ってもらった方がわかりやすい」といった意見が自由にどんどん出てくる関係が大事になります。これに対して、「部下に自由に言わせると、いい加減なことまで言って収拾が付かない」などとおっしゃる管理職の方がいらっしゃいます。そんなとき、わたしは「それはご自分と部下たちの間に、好き勝手なこと、いい加減なことしか言わない関係があるからではないでしょうか」とおたずねしています。つまりは、「人間関係のインフラ」ができてないと思われるからです。
 様々な会合の開始に当たって、「この際、皆さま方には忌憚のない議論をしていただきたい」といった定型的な挨拶を聴くことが多い。この世には、そもそも「忌憚の空気」があることを前提にしているのである。
「硫黄島からの手紙」 [14] 2023/04/07 Fri 9189 昨日 [12] の続き
 
「硫黄島」の二部作はクリント・イーストウッド監督によるアメリカ製の映画である。しかし、「硫黄島からの手紙」は渡辺が演ずる栗林忠道中将を主役にした日本語の物語だった。硫黄島は明治から農業が営まれる平和な島だったが、太平洋戦争で本土防衛の最前線となった。米軍の攻撃は熾烈を極め、それが島の形を変えたとまで言われる。いよいよ最後と判断した栗林中将が大本営宛に発信した訣別電報については、別の機会に取り上げる。
「My正解」 [13] 2023/04/07 Fri 9188 昨日 [11] の続き
 
「My正解」の続き。そのポイントは、講演で「ボトムアップ」という用語の問題を指摘したことと関連しています。これはリーダーシップに重きを置いた考え方ですが、わたしはコミュニケーションとも大いに関係すると思っています。その詳細はホームページの動画で取り上げていますが、リーダーには自分の「やっているつもり」がしっかり通じているかどうかを「聴く耳(吸い上げる力)」が求められるという話になります。それはコロナ禍で対面が困難な状況でも「どうすれば満足できるコミュニケーションができるか」について「全員の参画」で知恵を出し合う機運を創り続けていくことで実現できるのです。 
太平洋戦争の映画 [12] 2023/04/06 Thu 9187 
 
坂本龍一氏が亡くなって、1983年に公開された大島渚監督「戦場のメリークリスマス」を思い出した。ビートたけしも出演する、キャストがまことに面白い作品である。ただし、わたしは観ていない。三船敏郎とリー・マーヴィンの「太平洋の地獄(1968年)」の方は学生のときに劇場で観た。
 太平洋戦争中に日本兵と英米の軍人が関わる映画がいくつか製作されている。たとえば、クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」は二部作で、こちらは2本とも観た。後者の「硫黄島からの手紙」は日本軍から見たストーリーが大部分を占め、米兵が登場するシーンを除くとすべて日本語だった。
「My正解」のヒント [11] 2023/04/06 Thu 9186 昨日 [09] の続き
 
コミュニケーションに関わる質問に対して、わたしは次のような返事を書いた。
 こんにちは。世の中には個別のことで問われた際に、「一般論は言えるが、個々のケースで正解を言うのはむずかしい」と答える専門家(?)がいます。それに対して、わたしは「それなら給料を返上しないといけませんよね」と皮肉を言っています。わたしとしては、「無数にある正解」のうち、いま知っていることを出来る限り提供するのが仕事だと思っています。そして、その中からご自分の正解を選んでいただくことができれば大いに役立つことになります。
 また、「ピッタリの正解」でなくても、それが「My正解」発見のヒントになることも期待したいのです。そうした、視点からお問い合わせの件について、「わたしの正解」をご提示します。
 まずは、本題に入る前にわたしの自論(?)を書いた。自然科学の理論ですら永遠に仮説なのである。この世に「正解が唯一つ」などあるはずもない。
翼の上を覗く非常口 [10] 2023/04/05 Wed 9185 
 
もうかなり前から聞かなくなったのですが、飛行機に乗ったとき、「翼の上をのぞく非常口には脱出スライドが…」というアナウンスがありました。これを耳にするたびに、わたしは不思議なことを言うものだと思っていました。「翼の上を覗く」と勘違いしていわけです。それがずっと続いていたのですが、あるとき「翼の上を除くんだあ」と気づいたのでした。日本語を素直に聞けば「翼の上を覗く非常口」なんてあり得ないのですが、そこが思い込みの怖いところですね。そもそも出発前の機内アナウンスは真剣に聞いていないというのが本音です。もちろん、飛行機に乗り始めたころはそうではなかったのですが。
「コミュニケーション」の注意点 [09] 2023/04/05 Wed 9184 
 
講演後にメールで質問をいただいた。
 私は安全推進業務等を担当させて頂いておりますが、コミュニケーションについては日々重要であると感じているところです。昨今は新型ウイルス等、直接の(対面)コミュニケーションの機会が少なくなってきており、ツールを介したコミュニケーションとなることが多くなっています。これにあたりまして、意識して用いたほうがよいと思われる用語、用いないほうがよいと思われる用語などのコミュニケーションにおける注意点、ポイント等ございますでしょうか。話す速度や語彙について、メールであればなるべく平易に簡潔にと考えて従事している「つもり」でありますが、少しでもよくなることがあれば、と思っております。
 所属されている業種の部分に修正を加えたが、その主旨は伝わるだろう。ここで、「つもり」と記されているのは、わたしが「コミュニケーションは伝えたつもりだけでは成立しない」といった話をしたからである。
「組織安全学」への思い [08] 2023/04/04 Tue 9183 昨日 [06] の続き
 
昨日の原稿の続き。
 それは、「リーダーシップ」「集団規範」の問題であり、「慣れ」や「忘却」の問題も無視することはできない。現象の表面的な違いを越えて、「組織の安全」を実現するための普遍的な理論が求められている。新しい世紀を前にして、「組織安全学」の構築は、わが国の「安全」保障にとって、緊急の課題である。
 原稿の末尾に「組織安全学」なる用語を入れた。未だに「学」にまで育てきってはいないが、この思いはいまも変わらない。
雑草と自己中心性 [07] 2023/04/04 Tue 9182 
 雑草:
 自然に生えたいろいろな草。また、耕作したり栽培したりする草以外のいろいろな草。(精選版日本国語大辞典)
 自然に生えるいろいろな草。また、農耕地で目的の栽培植物以外に生える草。たくましい生命力のたとえに使うことがある。(広辞苑)
 自然に生える雑多な草。(明鏡国語辞典)
 もともと利用価値がなく、田畑や庭などにはびこり、いろいろな点で人間に有害無益な一群の種をさす。(ブリタニカ)
 weed : a wild plant growing where it is not wanted, especially among crops or garden plants.(oxfordlearnersdictionaries.com)
 「雑草:weed」は日本語・英語を問わず、辞書からも「招かれざる客」と認識されている。そもそも「雑草」という名前の草などないのである。自分達の都合だけで恣意的に「雑」をつけてひとまとめにする。何とも「自己中心的」かつ「視野狭窄的」なものの見方である。これ以上「雑」な発想はない。こうした心の意識が差別やいじめを生み出すのである。
組織安全学 [06] 2023/04/03 Mon 9181 
 
わたしが「組織安全学」という用語をはじめて使ったのは、前世紀最後の年である2000年である。雑誌「電気評論」の8月号に掲載された原稿に、「『組織安全学」』の構築」との見出しで次のように書いた。
 本稿では、組織における安全を、人間的側面に焦点を当てて検討した。ここで提起した課題は特定の組織に限られたものではない。それらの多くが、すべての人間組織に共通して働いている。毎日のように、信じられない事件や事故が報道される。「家庭崩壊」「学級崩壊」「少年犯罪」「強盗殺人」「医療ミス」「放射能洩れ」「警察不祥事」…。
 「日本は21世紀にも存在しつづけるのだろうか」。そんな不安さえ募ってくる。それらは、一見するとまったく異なる組織で起こっている。しかし、すべてが人間集団での出来事である。いずれの組織も、「健康で安全」であることを目標にしていたはずだ。安全に関わる人間的要因は、どの組織にも共通の力として働いている。
「亡くなる」=「いなくなる」 [05] 2023/04/03 Mon 9180 
 
人が「亡くなる」と、われわれの前から「いなくなる」。その一方で、「亡くなった人」にとっても、生きている人間が「いなくなる」のである。もっとも、この点については、「まだいる人間」としては推測しかできない。そんなことを考えて、「生死」は相対的なんだなあという気持ちになった。それに加えて、「亡くなる」と「いなくなる」の語感も絶妙な韻を踏んでいるように思えてくる。単なることば遊びだが、興味深くかつ面白い。
二の足の結果 [04] 2023/04/02 Sun 9179 昨日 [02] の続き
 
組織にとって「将来への投資」は必要不可欠である。放漫、冒険経営は論外だが、外傷体験が「羮に懲りて膾を吹く」状況を生み出し、多くの企業が新たな投資に二の足を踏んだのではないか。外傷体験とは「バブル崩壊」と「リーマンショック」である。
 投資には「人材活用・育成」、つまりは人への投資、給与のアップも含まれるはずだ。世紀の変わり目あたりから、電子関連のプロフェッショナルが海外の会社に高給で引き抜かれているという話を聞いていた。それは経済的なことだけではない。そもそも意欲のある者たちは、給与もさることながら、自分がしたいことができる、自分の力を活かせる場所を選ぶのである。
 外野で素人が聞く情報に基づく邪推だが、そうした機会を提供しなかったために人材を失った組織も少なくないのではないか。そして気が付けば、あれもこれも海外から周回遅れで、後塵の先が見えなくなるところまで落ちた。若者たちに負の遺産を残してはいけない。
祖父からの手紙(7) [03] 2023/04/02 Sun 9178 3月26日 [52] の続き
 
伊万里に引っ越したわが一家の落ち着き先は「借間」だった。父が転勤後に伊万里川の河口の木須町の大邸宅を探して、その3部屋を借りたのである。いわゆる「間借り」である。二階に二部屋あって、一階のおそらく4畳半ほどの一部屋で食事を摂った。炊事場が一階だったから、毎回食事を二階に持って上がるわけにはいかなかった。そのダイニングルーム(?)と三和土を挟んだ対面には学校の先生が夫婦で住んでいた。あるとき、その隣人(?)が夜遅く酔っ払って自宅(?)に帰ってきた。そして、「家に帰って、しょんべんまって、にゅーっぞ」と大声で叫んだ。これを聞いて家族で吹き出したことを思い出す。
失われ続けて30年 [02] 2023/04/01 Sat 9177 
 
今世紀を迎えてから数年後「失われた10年」が世の中で言われはじめた。それがあっという間に「20年」になり、さらに「30年」まで続いている。まさに「一世代:ワンジェネレーション」が経過した。しかも「もうそろそろ終わりが見えた」という明るい兆しも見えていない。それが「なるべくしてなった」と言うだけで放置してはまずいに決まっている。われわれ高齢者は先が見えているが、これからを担う若者たちに「はいサヨナラ」ではすまされない。そもそも「なるべくしてなった」という場合、ちゃんとした原因を探る必要がある。それとも「どんなに努力していたとしても、こうなるしかなかった」と考えるのか。
アマリリスの記憶 [01] 2023/04/01 Sat 9176 
 
今月の写真は八重のアマリリス。わたしは草花についても知識のないことでは相当に自信がある。家内が花瓶に挿していたのを写真に撮っただけのことだ。それにしても「きれい」の一言で十分で、それ以上言葉を並べる必要がない。純白でなくて赤いラインが走っているところがすばらしい。まだ子どものころに、学校でアマリリスが出てくる歌があったことだけは記憶している。そのときも、花の名前であることくらいは知っていたと思う。