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 味な話の素No.185 2018年9月号(5951-5982) Since 2003/04/29 Back Numbers
早出し夕刊(9:17am) 2018/09/30 Sun 5982
 
富田林署から逃げた容疑者が山口県で捕まった。この件については昨日の本欄で取り上げたばかりだった。自転車で逃走していたらしく、その距離は360kmにもなる。愛媛県内の道の駅で知り合った男性と3週間ほど一緒だったという。男性は自転車で日本一周をしていた。その話から、容疑者は四国にも行っていたことになる。大阪府警に護送される本人は顔を隠していたが、まさに針の筵だろう。もともと刑期に加え逃走罪も追加される。また、富田林署も担当の弁護士も「基本の基本を守らなかった」と責められても致し方ない。逃走からこの日まで49日間、どのくらいの税金が使われたのだろうか。 
高さんからの手紙(80)2018/09/30 Sun 5981 continued from 9/23
 三隅先生が長崎造船所で講演をした1966年は記念すべき年になった。当時、艤装工作部長の平田氏は「グループミーテイングと小集団の役割」について「確信」を得たのである。

 その後三隅先生の指導を得て艤装工作部は昭和41年(1966年)12月に2,000人を対象に毎週土曜日朝8時から50分間の「作業班別話し合い運動」を導入し成功したのです。船殻工作部で「全員参画運動」が開始される4年前の話です。この事実はあまり知られていませんがこの運動こそが長崎のアクションリサーチの基礎をつくったことは間違いありません(経営とグループダイナミックス179頁、183頁参照)。九州生産性本部で平田部長による最初の発表が行われました。

 長崎造船所におけるプロジェクトの成功を受けて、日本生産性本部が製作したスライドがある。タイトルは「全員参画による安全運動の実践」である。その中で「この工場ではじめて小グループによる参画方式を導入したのは昭和41年のことである」とのナレーションが挿入されている。ところで、今日では「男女共同参画社会」など「参画」の二文字は誰でも知っているが、これはすでに1970年代には使用されていたのである。
 
基本軽視の代償 2018/09/29 Sat 5980
 
富田林署から逃走した容疑者は捕まらないままで1ヶ月半以上になる。逃走の原因は素人目には当然の基本を怠ったためである。新聞情報によれば、12日までの一ヶ月間の時点で延9万人の警察官が捜索を続けているという。この中には実家や友人宅を24時間体制で監視している者も含まれる。
 他人様の懐具合を詮索する趣味は持ち合わせてはいないが、ある資料では、警察官の給与が「20代:約520万円 30代:約678万円 40代:約861万円 50代:約955万円」と記されていた(Well mode)。ここで「600万円」として、365日で割れば、1日当たり1万6千円ほどになる。その9万人分となれば、単純計算で9億6千万円である。もちろん勤務時間のすべてではないとしても、一方で24時間体制の人もいる。また通常の勤務ではないから、それに伴う諸経費が追加される。一般的に、組織は一人について給与の倍程度の経費がかかると聴いたことがある。
 もちろん、ここで金額の妥当性はほとんど問題にならない。とにもかくにも「基本」を守っていれば、こうした経費は1円もいらなかったのである。その上、これだけの警察官が一件に関わっているのだから、その他の犯罪防止へのエネルギーが殺がれるのである。とにかく「基本」を守らなかった代償はあまりにも大きい。
 
「中堅教諭等資質向上研修」受講者の声(4) 2018/09/28 Fri 5979 continued from 9/21
 
先生の研修の日はとても楽しみに参加させていただきました。この10年、目の前のことだけで精一杯で、あまり振り返ってきませんでしたが、目標を立て周りの先生方から評価をしていただいたことで、見えていなかった(見えないようにしていた?)ことに気づくことができました。消極的で表に出るのが苦手な私にとって、リーダーシップを取ることはつらいことでもありましたが、背中を押してもらうことで、周りの先生方との繋がりが強くなった1年でした。来年度も環境がかわってくるので、新たな信頼関係を築いて行きたいと思います。ありがとうございました。(小学校教諭 女性)

 研修を楽しみにしていたという一言で、担当者としては嬉しくなる。自分を「消極的」と評価していたことから「リーダーシップ」発揮に不安を感じていたことがうかがわれる。これに対して同勤の教職員たちが背中を押してくれたのである。この時点では相互の「信頼関係」が築かれた段階である。これがさらに「自信」となって、職場におけるリーダーシップの向上に繋がることが期待される。最初から対人関係に優れた者もいるだろうが、こうした「困難からの脱却」体験こそが、人を指導する立場になった際に大きな財産として役立つのである。
 
法治国家というもの(4)2018/09/27 Thu 5978 continued from 9/20
 
東名高速道路で起きた「あおり運転」による死亡事故について検察は「危険運転罪」で起訴した。法律の素人が「もし自分が被告側の弁護士だったら」と思い込んでみると、どんな対応をするか。
 これは問題としてはかなりやさしい。被告の行為によって二人の死亡を含む事故を引き起こしたことは否定のしようがない。そうなると、被告の行為を「危険運転罪」で裁くことはできないとの主張をするのが最適解である。ある意味では「それしかない」と言える。そもそもが専門家の間でも当該法律の適用に議論があり、どちらかと言えば懐疑的な雰囲気が漂っていたのである。つまりは「法の趣旨を拡大解釈している」と主張するのである。
 そして、それが裁判官によって認められたらどうなるか。そうなれば、被告は「無罪」になるのである。「えーっ、あんなひどいことをしていて『無罪?』」と絶叫もしたくなる。しかし、それは法の素人の感情的な評価に過ぎない。「
この法律で罰する」として起訴したのだから、「その法律では罰することはできない」という結論がでたら、それで一件落着、ゲームオーバーなのである。
 
がっちり買いまショウ 2018/09/26 Wed 5977 continued from yesterday
 
スーパーでの買い物45点の合計が「ジャスト1万円」だったのには感動した。レジ中に孫が追加した84円のアメが含んでのことだから奇跡的だ。こんなことは意図してもできることではない。生まれて初めて空前絶後だ。いやあ、「これは春から縁起がいいや」そのものである。
 そのとき漫才コンビ「夢路いとし・喜味こいし」の「がっちり買いまショウ」を思い出したのである。これは、3組の参加者があらかじめ「1万円」「3万円」「5万円」コースをくじ引きで選択し、スタジオに置かれた商品を購入していくというものだ。時間と点数制限があり、2分間で4点以上だった。その後、「5万」「7万」「10万」とアップした。その総計がマイナス4,000円以内に収まればめでたくゲットとなる。ただし、「1円」でも上回ると「アウト」で商品は没収される。ネットで検索したら、1963年から75年まで放送されていたという。最初のスポンサーはオリエンタルカレーで1972年から江崎グリコに替わっている。「そうだった、そうだった」と思い出す。じつに懐かしい。
 いまから半世紀以上も前、普通の家庭にとって電化製品を揃えることが夢の時代だった。一般的に「原価3割」というが、視聴者の頭には「定価」しかなかった。
 
45品のお買い物 2018/09/25 Tue 5976 continued from yesterday
 
それは春のある日のことである。わが家と息子の家族でスーパーマーケットに買い物に行った。その日は私がレジに立ったのだが、清算中に孫の一人が小さなアメをもってきた。「おじいちゃん、これも」と手渡されたのでレジかごに入れた。それから少し経ってから店員の声が聞こえた。「1万円です」。二つの家族がしっかり買うと金額はそんなものになる。それはそうなのだが、「1万円です」には驚きを隠せなかった。とにかく「ジャスト1万円」なのである。
 手渡されたレシートを見ると全部で45品の買い物である。先ほど孫がもってきたアメは単品で84円と印字されている。つまりは、あの「おじいちゃん、これも」がなければ、9,916円なのだ。いや、正確には消費税も計算に入れなければならないから、「細かいことはわけがわからん」である。とにかく「1万円」にならなかったことだけは間違いない。こんなこと、はじめから電卓をもって計算しながら品を選ばない限りできることではない。しかも「40品以上」などと条件を付けられれば「そんな暇人じゃない」と言いたくなるに違いない。
 ところで、今日は〝continued from yesterday〟なのだが、どこが「続き」かいと訝しがられるだろう。その答えは明日になりまあす!
夢路いとし・喜味こいし 2018/09/24 Mon 5975
 
かつて関西漫才の大御所に「夢路いとし・喜味こいし」の兄弟がいた。二人は1937年に少年漫才としてデビューし、2003年に兄の夢路いとしが亡くなるまで活動を続けた。旅回り芸人のもとで生まれたという。
 私たち団塊の世代はラジオで育った。ニュースやスポーツ中継、音楽にクイズ番組など、そのすべてはスピーカーから聞こえてきた。小学生のころから落語や漫才が面白くなって、よく聴いたものである。古今亭志ん生や柳亭痴楽、桂米丸などは今も「声」が聞こえてくる。痴楽の「つづり方教室」はお腹を抱えて笑った。声帯模写の桜井長一郎の長谷川一夫や田中角栄も懐かしい。
 漫才も楽しく面白かった。中田ダイマル・ラケットあたりが最初に記憶に残ったコンビだろうか。東京でも瀬戸てんや・わんやなどの名前が浮かぶ。人生幸朗・生恵幸子の「ぼやき漫才」もかなり受けていた。横山やすし・西川きよしは家内と結婚して間もなく吉本で見た。こうして思い出していたら切りがない。
 冒頭に登場した「夢路いとし・喜味こいし」兄弟だが、テレビの「がっちり買いまショウ」を思い出す。
 
高さんからの手紙(79)2018/09/23 Sun 5974 continued from 9/16
 三隅先生と岩井氏の最初の出会いについては明らかではないが、とにもかくにも高さんは三菱重工業長崎造船所に入り込んだのである。そして、高さんの手紙によって「プロジェクト=全員参画による安全運動」がスタートする端緒を知ることができる。

 岩井氏の思いは「なによりも死亡災害を無くすことが重要だ」に集約されます。そして、当時三菱長崎の現場で岩井氏と同じ悩みをもっていたのが艤装工作部(進水後の艤装工事を担当)の平田昇部長(後の造船所長)でした。東京本社の岩井さんが三隅先生を平田部長に紹介し、昭和41年(1966年)長崎造船所で最初の三隅先生の講演会が行われたのです。平田氏はこの講演を聴き「グループミーテイングと小集団の役割」について確信を得たそうです。

 これまで長崎造船所と岩井氏の名前が繰り返し出てきたが、ここであらたに平田昇氏が登場する。そして、三隅先生の長崎造船所における最初の講演会が1966年だったこともわかる。このとき、造船所の安全にとって、ひいては健全な組織運営にとって「グループミーティングと小集団」が欠かせないとの確信を得たのは平田氏だったのである。
 
「公開講座」の3年目 2018/09/22 Sat 5973 continued from 9/10
 
「公開講座」をスタートして3年目を迎えた1987年には大きな変更をしている。この年は教育学部としては10講座へと開講数が減っている。私が担当したのは第9と第10講座である。前者は「教師のためのワープロ入門」で、後者は「教師のためのBASIC入門」となった。
 まずは「ワープロ」の登場である。定員は10名だが、これはその台数しかワープロを「借りる」ことができなかったからだ。当時は「ワープロ専用機」の時代で富士通の好意で講座向けに貸出してもらった。そもそもは富士通系の会社に勤めていた大学時代の友人が熊本支社にいたことから、借用の交渉をした。期日は7月29日(水)から31日(金)までの3日間で、合計20時間に達している。最初の2日は9時から17時のまでのびっちりスケジュールである。
 このときは富士通からアシスタントまで派遣してもらった。そのころはワープロが普及しはじめたころであり、富士通としても教師たちに会社の名前を知ってもらうチャンスと考えたのだと思う。
 ところで、「講師」の私だが、当時私は「情報教育のプロ(?)」としてちょっとばかりは知られていた(と勝手に思っている)。その証拠に、地元のテクノポリスで開催された「情報教育シンポジウム」では孫正義氏と同席したほどなのである!もちろん、孫氏の大脳の細胞には私のことなどいささかの痕跡も残っているはずもないが…。
 
「中堅教諭等資質向上研修」受講者の声(3) 2018/09/21 Fri 5972 continued from 9/14
 
自分と向き合いながら、前向きに講義に参加できました。先生の楽しいお話もとても好きでした。これまで頑張ってきたこと、これから頑張ろうと思っていること、たくさん見つけることができました。教師生活を心から楽しめている今がとても幸せです。そのことに気づいた10年目研修でした。本当にありがとうございました。(小学校教諭 女性)

 私が担当する部分は、5月ころを第1回目とし、7月あるいは8月の夏季休暇中、二学期を終えた12月、そして翌年2月の第4回目で終了となる。「10年経験者研修」としてスタートしたときは1日に近いスケジュールも含まれていたが、全体の時間短縮もあって、午後の3時間から3時間半ほどになった。すべて「グループワーク」を導入するため、私の話は30分程度である。自分としては「もっと話したい」という欲求を抑えており、そのことを受講者に冗談を交えながら伝えている。そうしたなかで、私の話を評価してもらっているのだから、嬉しい限りである。「教師生活を心から楽しめている今がとても幸せです」。しっかり前に進んでいただきたい。
 
法治国家というもの(3) 2018/09/20 Wed 5971 continued from 9/18
 昨年6月、東名高速道路であおり運転をした挙げ句に車を停止させ、後続のトラックに追突され両親が死亡、子ども二人が怪我をした事故です。どう考えても許しがたいことで、26歳の男が自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪で起訴されました。このとき、「その行為」が「自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)」に問えるかどうかがワイドショーでも話題になっていました。専門家も「適用できる」という意見と「むずかしい」との意見に分かれていました。ただ、全体のニュアンスとしては「そう簡単ではない」という雰囲気があったと記憶しています。
 つまりは検察側が、その悪質さを根拠に「適用を決断した」といった感じだったのです。あおり運転という脅迫的な手段で高速道路上で車を停車させたことから、4人の死傷者が出たことは疑いありません。しかし、事故が起きたのは「停車中」のことです。したがって、自動車は動いていない状況であり、法律の「運転(中?)」に該当するか否かが争点になるわけです。横浜地裁が「危険運転罪の適用」に否定的な見解を示しているということは、これを「運転」と「解釈」することがむずかしいと言っているのだと思います。
 
国家の機能 2018/09/19 Wed 5970
 塩野七生著「ローマ人の物語」は文庫版で全43冊からなる。私がいま読んでいるのは20冊目の「悪名高き皇帝たち[四]」で、あのネロについて書かれている。まだ全巻の半分に至っていないが、あわてて読み終える気持ちはない。塩野氏の文体は平易で読みやすく、サラサラと先に進むことができる。それでも、文章だけでなく、ローマの時間をゆっくりと味わっていきたいのである。
 ところで、「19」のなかに、皇帝クラウディウスが完成させたローマの外港が出てくる。その後、トライアヌス帝が大改造し、「皇帝港」として500年に亘って機能したという。しかし今日、その雄大な「港」の面影はない。テレヴェ河とその支流によって流された土砂で海岸線は先へ先へと伸び続け、ついには陸地が「皇帝港」を包み込んでしまった。水たまりと言えば過小な評価に過ぎるかもしれないが、とにかく池のようになってしまったのである。
 塩野氏は語る。「国家が機能していた時代と機能しなくなった時代のちがいを見せてくれる好例のように思える」と。ふと、劣化しつつある列島のことを思い起こす。なお、これに関連して、自称「世界最短ホラー2002」をお読みいただければ幸いです。(クリックをどうぞ)
世界最短ホラー
 
法治国家というもの(2) 2018/09/18 Tue 5969 continued from 9/15
 素人が言うのも何ですが、判決は「人間」である裁判官が頭の中で考えた「法解釈」です。つまりは「絶対的真実」というわけではありません。これは「法によって人が人を裁く制度」が永遠に抱え続けていく課題なのです。いや「問題」と言った方が正確でしょう。
 こうした制度のもと、裁判では「訴えるために用いた法律に違反しているかどうか」が争われます。したがって、明らかな犯罪行為があったとしても、「訴えられたAという法律が禁止している行為にはあたらない」となると「無罪」になるのです。現実にはそうしたケースも多いのでしょうが、社会的に注目を浴びた事件になると表面化します。
 昨年の6月に東名高速道路であおり運転を受けて停止させられた一家4人が死傷した事故は世の中に衝撃を与えました。その後は警察もあおり運転の取り締まりを強化しています。またドライブレコーダーの普及にも拍車がかかっているようです。この事件では26歳の男が自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪で起訴されました。ところが、公判前の整理手続きと呼ばれる段階で横浜地裁が「危険運転罪の適用」に否定的な見解を示しているということです。
 
早出し夕刊(8:30am) 2018/09/17 Mon 5968
 
大坂なおみ選手のインタビューはニュースでホンのちょっと見た。あとは新聞事から得た情報である。まずは自分のアイデンティティーを訊かれて、「自分は自分」と答えた。これ以上の正解はない。その前後を知らないから、いつもの邪推だが、「日本人だ」という答えを引き出したかったのではないか。子どもへのメッセージは、「ゲームなので楽しんで。私を目標にしないでほしい。そこまでの責任は取れない」である。これまた最高の回答だ。
 ネット上で質問が稚拙だという批判があったようだ。国中が劣化しているのではないかと心配になる。「えっ、そう言うあんたは大丈夫なのかい」ですって?そんな「稚拙な」ご質問にはお答えしません。ハイ…。
  
今月の表紙 2018/09/17 Mon 5967
 
今月は人吉の駅弁の3つ目、「鶏のてりやき弁当」です。先月は栗の形をした「栗めし」でしたが、この弁当はひょうたん型です。食事の味は器にも影響を受けます。どうしてひょうたんなのかは調べていませんが、しっかり味付けされた鶏の肉が「うまい」のです。
 「鶏のてりやき」といえばすぐに思い出すことがあります。私は1996年にオーストラリアのパースで半年ほど生活しました。その間の夏休みに家内と娘がやってきました。そのとき、西オーストラリア大学の先生が3人を「日本料理店」に誘ってくださったわけです。そこでのお勧めが「てりやきチキン」だったのです。先生ご夫婦のお気に入りでした。
 さて、もう一枚はフェリーからのショットです。つい先だって熊本港から島原に向かう「オーシャンアロー」に乗りました。これは船尾からの写真で遠くに熊本港あたりが写っています。この間を高速で走るので島原まで30分、あっと言う間に着いてしまいます。ほかにもオーソドックスな九商フェリーがあって、こちらはのんびりと1時間の行程になります。いずれも前方に雄大な溶岩ドームを抱えてそびえ立っている雲仙岳が近づいてきます。あの大火砕流が発生したのは1991年6月のことでした。
 
高さんからの手紙(78)2018/09/16 Sun 5966 continued from 9/09 
 岩井氏が三隅先生とおそらくは東京での講演会で出会ったというのが高さんの推測である。三隅先生はすでに中興鉱業で小集団活動を展開していた。こうしたアクションリサーチについても講演の話題に出たにちがいない。高さんの手紙はそうしたあたりに触れる。

 中興鉱業の本社は当時天神富士ビルの九州生産性本部のワンフロアー上にあり、小生も何度か伊万里の現場に行ったことがあります(このあたりは黒川正流氏や石田梅男氏が詳しい)。小生は知らなかったのですが岩井さんも何度か中興鉱業の現場に行かれたそうです。氏はエンジニアですからグルダイのアクションリサーチが本物かどうか自分の眼で確認したかったのだろうと思います。そして次第に直感から確信へと変化したそうです(これは岩井さんから直接聴いた話)。

 岩井さんの口から、造船所にとってグループ・ダイナミックスが有効であるとの「直感から確信へと変化した」という言葉が出たのである。「奇跡は求めるのみに起きる」。これは私のワンフレーズアピールの一つだが、岩井氏の造船所活性化に対する思いが「奇跡の出会い」を創出したのだと思う。
 
法治国家というもの(1) 2018/09/15 Sat 5965
 私たちの国は「法治国家」です。すべての行為は「法律」に則って罰を与えるかどうかが決められます。つまりは「法律に書かれていないこと」は裁きようがありません。人間の行為は無限にあります。そこで「法律に書かれていないこと」、つまりは「抜け穴」を探してとんでもないこと、あるいは人間としては許しがたいことをする人が出てくる可能性が永遠にあるのです。
 もちろん法律は「すべての行為」を具体的にリストアップできませんから、攻める側は特定の行為を「これはこの法律に触れる」という解釈をして罰を与えようとします。これに対して防御する側は「それはこの法律には該当しない」とか「法律の拡大解釈だ」と主張します。こうした両者の主張について最終的に判断するのが裁判官ということになります。
 裁判官には「自由心証主義」なるものが保証されています。これは、「事実認定・証拠評価について裁判官の自由な判断に委ねることをいう。裁判官の専門的技術・能力を信頼して、その自由な判断に委ねた方が真実発見に資するという考えに基づく」ものです(Wikipedia)。裁判官は「法解釈のプロ」ではありますが、その前に私たちと同じ人間です。国は「事実の認定」や「証拠の評価」をその人たちの「自由な判断に任せる」と決めているのです。
 
「中堅教諭等資質向上研修」受講者の声(2) 2018/09/14 Fri 5964 continued from 8/25
 自分自身を見つめる、思考、行動を変えていくとは、私にとってとても苦手な分野です。できれば自分に合った方法のまま、ずっとやっていけたらいいと思ってしまいます。ここ数年、近い学年と同じ校務分掌を担当していたこともあり、さすがに、ずっとこのままではいけないと思うようになりました。今回、内容は何にせよ行動目標を周りに示したことで、私の意識も少なからず変わりました。今回掲げたチャレンジを忘れないうちに、一歩踏み出したいと思います。(小学校教諭 女性)

 研修のキーワードは〝Never Ending Challenge〟と〝Cha,Cha、Chaの心で行こう〟である。人生は終わりまで「チャレンジしましょう」とお勧めする。〝Cha,Cha,Cha〟はもう20年ほど前に創ったフレーズ〝Challenge the Chance to Change yourself〟の頭を並べたものだ。附属中学校の校長をしていたときはこれを生徒たちに伝え、卒業式の式辞にもいれた。世の中は「変えさせられる」ことが多い。そんな中で「自分で変えられることは、しっかりチャレンジしよう」という呼びかけである。それを「チャンス」だと考えることが重要だ。受講者にそれが伝わったのだと思う。
 
生まれて初めて 2018/09/13 Thu 5963 continued from yesterday
 ものすごい形相をしているのがウイリアムス選手であることはすぐにわかりました。それからしばらくして試合が再開となり、私の目には「あっという間」に大坂選手が勝ってしまいました。ともあれめでたいことではありますが、会場はブーイングというではありませんか。大坂選手がとんでもなく問題行動をしたのかと思ってしまいました。ところが、どうも判定にまつわる問題のようです。しかも大坂選手が直接的に何かをしたことでもない感じです。それでも表彰式にまでブーイングというのはいかがなものかと思うのが自然でしょう。
 それはそうとして、そこまで見てから私は免許更新講習に出かけました。今年度は受講者の増加を予想して私は9コース担当しました。朝の9時から16時20分までの6時間コースですが、この日がラスト9回目でした。
 さて、あとになって試合の再放送を見ました。そこで話題騒然の試合をはじめから終わりまで観戦したわけです。ところで、テニスの「一試合」を「すべて」を見たのは「生まれて初めて」のことでした。当然のことですが、古稀を迎えるようになっても、「初めて」のことが無数に存在しているのです。なんと楽しくすばらしいことでしょう。ところ
 
朝からテレビ 2018/09/12 Wed 5962 continued from yesterday
 ところでテニスは点数からして訳がわかりません。まだ1本取っただけなのになぜか15点にもなるんですね。その次が30ですから、「なあんだ15の掛け算か」と思いきや、今度は40というではないですか。この点からして大いなる疑問が湧くわけです。もちろん、テニスの歴史をきちんと勉強すればその理由はしっかりわかるのでしょう。ただ、私としてはそこまでの熱心さは持ち合わせていないわけです。
 そんな私でも錦織選手が話題になりはじめたころから「すごいなあ」くらいの意識はありました。またニュースで流されるダイジェスト程度のものは、それなりに見る機会が増えました。大坂選手については、数年前にテレビで「ひょっとしたら」と評価される選手が出てきたという内容の話を聴いたことがありました。そして、日曜日の朝でした。いつものように朝からはしゃぎながら仕事をしていましたが、大坂選手がネットで1セット(?)先取したというヤフーの見出しは見ていました、
 さて、当日は教員免許更新講習があり、いつものように6時30分から朝食を摂るためにダイニングに移動しました。そしてやおらテレビを点けたところ、相手の選手がすごい形相で叫んでいる画面が飛び込んできました。
 
テニスとバドミントン 2018/09/11 Tue 5961
 私はテニスが相手の陣地にボールを打ち込んで、それを相手が返せなかったらこちらのポイントになるくらいのことは知っています。そのために、そもそも相手が手を出せないほどのスピーでボールをここぞというところに打ち込めば最高です。また、どんなにむずかしいボールでもしっかり打ち返すのもすばらしいわけです。
 こうした「原則」はバレーボールや卓球でも同じですね。またバドミントンはイメージとしてはテニスに近いと言えるでしょう。その昔、娘が小学生のころでした。毎朝、アパートの四階の自宅から降りてバドミントンをしたものです。もちろんネットもなく、ひたすら打ち続けるだけのことです。それでもラリー(?)の回数はどんどん増えていったのです。いま、日記をチェックする時間はないのですが、少なくとも100回以上の記録は達成できたと思います。
 そもそもバドミントンは私が子どものころ朝の運動として父としていました。それを思い出して、子どもとはじめたのでした。その相手が娘だったことはたしかですが、息子との記憶はまったくありません。そのあたりの事情は、大昔のことですから思い出せません。すでにそんなことで喜ぶ年齢ではなくなっていたのでしょうか。
 
「公開講座」のスタート 2018/09/10 Mon 5960 continued from 9/08
 私が公開講座を担当したのは1985年からだが、最初は「教師のためのコンピュータ初級」と「教師のためのビデオ入門」だった。その当時はコンピュータもビデオも、学校にこれから導入するといった時期である。いずれも高価で、その性能は現代のものとは比較にならない。今の機器を新幹線にたとえれば、自転車はおろか三輪車程度だった。
 いずれの講座もすぐに定員になった。これで次の年度も開催することが決まった。その年、教育学部では12講座が開講されている。今年度は私の講座を含めて5コース程度のようだ。
 さて、2年目は第9講座が「ビデオ入門」で、第11講座は「教師のためのコンピュータ中級」になった。ビデオは一般からも希望があり、「教師のため」をはずした。コンピュータは教師を優先することにして対象に制限を加え、「中級」にグレードを上げた。この年は当時「教育工学センター長」の比屋根方健先生が「第10講座 教師のためのコンピュータ初級」と「第12講座 一般対象コンピュータ初級」を担当された。この年は「社会人」を受け入れたのである。受講料は3,000円のままである。その後しばらくして比屋根先生は滋賀大学に移籍されたが、その後はどうされているだろうか。
 
高さんからの手紙(77)2018/09/09 Sun 5959 continued from 9/02 
 岩井さんが「人間の問題」に取り組む必要性を痛感していたとき三隅先生との出会いがあったようだ。高さんの手紙を引用しよう。

 おそらく昭和38年(1963年)か39年(1964年)、岩井さんは三隅先生と偶然出会います。最初の出会いが何時どこだったのかを一度三隅先生か岩井さんに聞いてみようと思っていたのですがお二人とも故人となられ結局聞きもらしました。小生はおそらく東京で何かの機会に岩井さんが三隅先生の講演を聴かれたのではないかと想像しています。この時点で岩井さんはグループダイナミックスに三菱長崎造船所の活路があると直感されたそうです。九大では昭和37年(1962年)に既に中興鉱業における「企業と人の民主化運動」という最初の小集団活動のアクションリサーチがスタートしており、昭和38年(1963年)には西鉄実験が成功していました。

 高さんにして、三隅先生と岩井氏との出会いに関わる「証言」を得られていないのである。ここで言及されている「西鉄実験」とは、「集団決定」を用いてバスの事故を激減させたものである。それはグループ・ダイナミックスを事故防止に適用した世界ではじめてのプロジェクトであった。
 
公開講座のスタート 2018/09/08 Sat 5958
 本年度で熊本大学シニア教授が定年を迎える。これで2回目の定年になる。最初の定年の際に身辺整理を相当程度に済ませた。しかし、それでもまだまだ完璧にはほど遠く、整理すべきものが多く残っている。バインダーに綴じている資料もあるが、そのなかに教育学部の「公開講座」の募集要項があった。
 昭和60年、つまりは1985年のものが最初だ。そこには12講座がリストアップされている。私が担当したのは第11講座「教師のためのコンピュータ初級」と第12講座「教師のためのビデオ入門」である。前者は8月5日(月)~8日(木)の4日間で、午前10時から16時まで、合計20時間に及ぶ。募集定員は20名で受講料は3,000円となっている。「ビデオ入門」の方は8月9日(金)~11日(日)の3日間、9時30分から16時30分と、こちらは1日6時間の計18時間になる。定員は15名で受講料はこちらも3,000円である。この週は月曜日から日曜日まで、まるっきり違った内容の講座を2本、出ずっぱりの38時間を担当したわけだ。これも33年前のこと、私もまだ36歳で若くかつ元気よかった。
 
晩節を汚す 2018/09/07 Fri 5957
 私が大学1年生の後期ころから現在までお付き合いいただいている女性がいる。私よりも7歳ほど年長だが、さまざまことでアドバイスをもらう。
 私がある団体の長を務めたときのことである。「吉田さん、ちょっと気をつけた方がいいなあ」「えっ、何のこと?」「あなたが、いろいろなことを言うと、それはトップの発言になるのよ」「ああ、それはそうだろうなあ」「そうなのよ。あなたが『…しようか』と発言すれば、そのためにみんなが走り回るわけ」。
 こんな感じの会話をしたことがある。私にとって組織は重要な研究対象だが、われながら「長」として自覚がないもんだと思った。たとえ独り言であっても、トップの発言は重大な影響を与えるのである。そうした立場にある者はこの点をしっかり認識しておかねばならない。しかも、権力が強まれば、それに伴って、周りから直言する者が消えてしまう。それがさらに「何でもできる」「われこそ正義」という自己中心的判断を強化する。
 大地は山がなくても存在できるが、山は大地がなければ存在できない。トップは「大地に対して感謝し、尊敬しながら組織を運営すべきなのである。かつては、努力によって達成した業績で世の称賛をほしいままにしていた人たちが、いま自ら晩節を汚しているのではないか。
 
すべて対処済み 2018/09/06 Thu 5956 continued from yesterday
 さて、録画した「健康カプセル」の「食中毒特集」を家内に見てもらうことになった。番組の進行とともに様々な情報が提供されていく。
 たとえば「ミニトマトのヘタ」には細菌が溜まりやすいので取っておく必要がある。家内はミニトマトが入った弁当の画像が映ると、その瞬間に「ヘタは取らないとね」と「解説」する。肉を揉んでいる映像が流れると「その後はちゃんと手を洗う」ときた。その後も「おにぎりを握るときはラップを使う」「煮物の残りなどは小分けにして冷蔵庫で保存」、さらには、梅干しもわが家の弁当では刻んでご飯と混ぜ合わせている。とにかく「正解」のオンパレードなのである。そのほかにも生卵を扱ったときもちゃんと手を洗うなどなどの原則があふれ出てくる。そして最後は「お弁当でおかしくなったことはないでしょう」と余裕の発言で締めくくった。
 そんなわけで、録画していた番組はただちに消去となった。それにしても40年を超える弁当づくりではリスクのマネジメントがしっかり実現されていたわけである。そんな思いとともに、昨日も小さな容器に入っている「果物」を味わった。わが家の弁当は「果物付き」である。
 
健康番組 2018/09/05 Wed 5955
 この年になるとテレビも「健康番組」を見るようになる。たとえば日曜日の朝7時はTBS系で「健康カプセル!ゲンキの時間」の常連である。子どものころから7時は「NHKニュース」できたが、このごろは「自分の健康」が優先するようになった。この番組は三宅裕司の司会でとりわけ高齢者が関心をもつ話題が満載である。
 先日は「食中毒」がテーマだった。そのスタートから弁当が出てきたから、すぐにビデオの録画スイッチを入れた。私の昼食は家内の「手作り弁当」である。早いもので結婚してから43年が経過したが、出張などで不在にするとき以外はせっせと弁当を作ってくれる。そこで、「弁当と食中毒」を取り上げるというので、家内にも参考にしてほしいと思ったのである。
 因みに休みの日は、家内にしっかり休んでもらうことにして、朝になったからといって起こさない。平日は早朝から起きて弁当づくりに励んでくれるのだから当然である。一方の私はといえば、年間を通して早ければ4時台、遅くても6時前には絶叫しながら目を覚ましている。九州だから夏でもまだ十分に明るくはない。そんな時間からしっかり抑制しつつ騒ぎまくる。こんな行動がいつからはじまったのか自分でも定かでない。ただ私としては若いころからの体質だと理解している。
ワンシーン・ワンカット 2018/09/04 Tue 5954
 三谷幸喜監督の〝short cut〟(2011)は信じられない作品である。「完全ワンシーン・ワンカット」と称するもので、エンドロールが出るまでの1時間52分間、カメラを止めずに「ワンカット」で話が展開される。しかも登場人物は夫婦役の中井貴一と鈴木京香、それに梶原善の3人のみである。このうち中井と鈴木は出ずっぱりなのだ。
 お互いの間にすきま風が吹いている夫婦が妻の親戚の葬儀に出かけたのだが、その帰りに山中で車が故障してしまう。そこで自分たちの足で町まで降りていかざるを得なくなる。自分が子どものころに遊んだということで妻が近道を先導する。そこからタイトルが〝short cut〟になったのだろう。その途上の山中で起きる「事件」と「夫婦の会話」の実況中継である。
 「ワンカット」の手法が面白いことは当然として、2時間も休みなしで演技し続ける二人の主役の能力には驚かざるを得ない。セリフにはアドリブが相当に入っていると思うが、それもすべて状況にあっているから、おもしろさおかしさを増幅する。そんな作品をつくろうと思った三谷幸喜もすごいが、そうした意図を見事に演じきる中井と鈴木のプロフェッショナルさには感服する。
 
学習者検証の原理 2018/09/03 Mon 5953
 先月だったか、新車の燃費測定で不適な検査をしていた自動車会社が「また」増えた。新たに「参加」したのは、「スズキ」「マツダ」「ヤマハ発動機」の三社である。ただし、「スズキ」の12,819台中6,401台(49.9%)に対して、「マツダ」は1,875台で72台(3.8%)、「ヤマハ発動機」が二輪車335台のうち7台(2.1%)である。
 「マツダ」と「ヤマハ発動機」の絶対数はかなり少ないが、それはそうで「どうして72台や7台(だけ)が不適切だったのか」を知りたくなる。その詳細な事情はわからないが、今回もわが国で大流行中の「『基本』が守られない症候群」の一つにリストアップすることになるだろう。
 それにしても、名だたるメーカーの「ほとんど(?)」で「不適切検査」が発覚するのだから、ここで制度や仕組み、さらには手続きなどの適切性についても分析する必要がある。プログラム学習を提唱した心理学者スキナーは「学習者検証」の重要性を指摘している。これは、プログラムがうまく機能しないとき、その原因を「学習者」に帰するのではなく、「プログラム」の問題だと考えて改善を図るべきだという考えである。新車の検査も、「プログラム=仕組み」が怪しいのか?
高さんからの手紙(76)2018/09/02 Sun 5952 continued from 8/26 
 私が「ボトムアップ」の非人間性を指摘し、「グラウンドアップ」に転換することを提唱していることは8月31日にも書いた。「高さんからの手紙」に登場する岩井氏は「グラウンドアップ」を行動の原理にした組織人だったに違いない。その岩井氏について高さんの話は続く。

 三菱造船所東京本社の岩井氏が全国の幹部に対して将来構想に関するアンケートを実施されたそうです。これに対して、新製品の開発・技術開発・マーケット戦略・国際化等々多数の意見が寄せられたのですが、この中に「人間の問題」に関する提案が一件もなかったとのことです。氏はこの事実に「異常さを強く感じた」といいます。岩井さんは「人間問題」の解決なくして合併後の三菱の発展はありえないと直感されていたようです。三菱では昭和38年(1963年)当時既に長崎の香焼100万トンドック建設計画も浮上しており、技術的には新工場の建設は十分可能だが、これを動かす人間がいなければ香焼工場はその真価を発揮できないだろうと云う思いがあったそうです。

 技術のプロである岩井氏が「人間の問題」を重視していたのである。それは、産業界における当時の状況を踏まえれば、岩井氏は疑いなく慧眼の持ち主だったというべきである。
 
半世紀を経て… 2018/09/01 Sat 5951 continued from 08/31 
 これで、8月29日水曜日からはじめたお話しも最終回となる。ある研修の昼休みのことである。一人の受講者が私に近づいてきて声をかけられた。「先生、先ほどの話で私は涙が出ました」。それは私の「自分は食べさせてもらっている」という話についてだった。その概略は以下の通りである。
 その方のお父さんは私よりも一つ年上だが、1970年ころ三菱重工業長崎造船所で働いていた。それは私が紹介したプロジェクトの時期と重なっている。お父さんは義務教育を終えるとすぐに仕事につかれたらしい。細かい理由は措くとして、子どものころはそうした父親に反撥していたという。しかし自分が大人になり、社会人として仕事についてからようやく父親を理解できるようになっていた。
 そんな状況で、「先生の『食べさせる、食べさせてもらう人間』の話を聴いて、父がその当時しっかり大事な仕事をしていたことを再認識できて嬉しかった」ということだった。そして「先ほど父にビールを送りました」と笑顔で付け加えられた。それを聴いている私の目頭も熱くなった。何というすばらしき偶然の出会いであることよ!