式 辞
今年もすばらしい春がやってきました。
本日、ご来賓の方々と保護者のみなさまのご臨席を賜り、熊本大学教育学部附属中学校の入学式を挙行できますことを、心から感謝し、厚く御礼申し上げます。
161名の新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
みなさん。今日からいよいよ中学生です。これから3年間は小学校のときよりも、もっと多くの人と出会うことになります。そして、これまでとは違った多くの経験も積んでいきます。小学校とは違った勉強や学習も増えていきます。どれも、みなさんが立派な大人に成長していくために必要なものばかりです。これから始まる中学校での生活を楽しみにしておいてください。
ところで、新入生のみなさん、、あなた方は100年以上も続いてきた学校の仕組みが変わる、記念すべき年に中学生になるのです。それは、学校週5日制といわれるものです。これまで学校は、第2土曜日と第4土曜日だけがお休みでした。ところが、今年からは、すべての土曜日が休みになるのです。
ここで、疑問に思う人もいると思います。大人たちは「週休2日」という言い方をします。土曜日と日曜日の2日間を休むので「週休2日」と呼んでいるわけです。それなのに、みなさんの場合はどうして「学校週5日制」というのでしょうか。じつは、これには、それなりの理由があるのです。大人たちは一生懸命に「仕事」をします。しかし,「仕事」をしているばかりでは疲れますから、休みも必要になります。そこで、1週間に土曜・日曜の2日は「仕事をしない」で休むのです。そうした理由で、大人の場合は、「週休2日」と呼んでいるのです。
それでは、みなさんのような中学生にとって何が「仕事」なのでしょうか。「勉強することだ」と考える人もいるでしょう。もちろん、それも間違いではありませんが、みなさんの「仕事」はそれだけではないのです。じつは、みなさんにとっては、生きている時間のすべてが「仕事」なのです。友人と遊ぶことも、家庭でお話をしたり食事をすることも、そして家族旅行に行くことも、大人になるために必要な「仕事」なのです。「十分に睡眠を取る」ことさえも、「仕事」ということができます。睡眠は健康な生活を送るために欠かせないものだからです。こうして、みなさんにとっては、24時間のすべてが「仕事」になるのです。ただ、そのうち「学校に行く仕事」が月曜日から金曜日までの5日間ですから、「学校週5日制」というのです。ですから、学校がないときも、自分たちの大切な「仕事」の時間を有意義に過ごす必要があるのです。
また、「総合的な学習」という新しい時間もあります。これには、いままでのように教科書はありません。みんなが楽しく有意義な人生を送ることができるような力を身に着けるために行われる授業です。附属中学校の先生方は、ずっと前から、「総合的な学習」について研究と実践を進めてこられました。ですから、みなさんは十分に満足できる「総合的な学習」を体験できると思います。また、この他に、自分たちで勉強したいものを選ぶことができる「選択科目」も準備されています。
このように、中学校では、多くのことを学び体験します。そこで大切なことは「自主性」です。自分で考え、自分で行動していくことです。ときには、思い通りにいかないこともでてきます。それも大人になるために必要なことです。世の中は、すべてがうまくいくものではありません。そんなとき頼りになるのが周りの人たちです。それは友だちであり、家族であり、もちろん先生方です。こうした人たちと話をするだけで、悩みも解決していくのです。そのためにも、お互いに、周りの人たちを大切にしましょう。ときには、みなさん方が、困っている人の力になることもあります。そうした中で、自分も相手も理解を深め成長していくのです。とくに、自分の家でも、家族の方とすすんで話しをしましょう。学校での出来事や友だちや先生のことなど、何でも話しましょう。話すことこそが、私たちが元気に生きていくために最も大切なことなのです。
そして、元気よく生きていくためには、まずは「あいさつ」が大事です。朝から「おはようございます」と大きな声であいさつしましょう。それがちゃんとできれば、その日はずっと気持ちよく過ごせます。先生に会ったときも、「自分の方が先にあいさつするぞ」という気持ちでいてください。先生から、「あっ、生徒に負けた」といわれると楽しい気分になるはずです。みなさん、今日から元気に中学校の3年間を過ごしましょう。
最後に、保護者の皆さまにお願いがございます。子どもは「みんなで育てる」ものです。最近では、家庭・学校・地域の連携が強調されています。しかし、その中でも家庭でのコミュニケーションは生活の基本です。お子さまとの毎日の関わりを大切にしていただきたいと思います。また、教師とのコミュニケーションも欠かせません。その点で学校とも積極的に関わりを持っていただきたいと思います。さらに、附属中学校は教育実習や研究活動、新しい教育的試みを展開する重要な役割を担っています。こうした背景も十分にご理解いただき、ご支援をいただきますようお願い申し上げて、式辞といたします。
平成14年4月9日
熊本大学教育学部附属中学校長 吉田道雄
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